© 2018 by KINU -- Flower Artist --

Just for you

「わっ!すごいなーーーーーー!!!」

と、恩師がそう声をあげた。

 

私が、恩師に贈るための花束をKINUさんにオーダーしたときのこと。

出来上がった作品をみたときの衝撃は、今でも私の記憶に鮮烈に残っている。

花束から漂う空気感、雰囲気、佇まいは、まさに厳しくもとても紳士的で所作が美しい、あの恩師そのものだったからだ。

「一刻も早くプレゼントしたい!」

そう思った花束は初めてだった。

 

どうしたら、こんなにその人のイメージで花束をつくることができるんだろう?

KINUさんの花束は、どうしてこんなに人を惹きつけるのだろう?

どんどん私の好奇心は膨らみ、どうしてもその理由を知りたくて、気がつけば勢いでインタビューを申し込んでいた。

 

そこで知ることが出来た制作の舞台裏や、KINUさんの花に対する想いー

全て語り尽くすにはまだまだ足りないけれど、少しでも紐解いてお届けしたい。

 Q1 

KINUさんは、花を贈られる人をイメージする「人となりを表す花」を作ってらっしゃいますが、どうしてそういうお花を作ろうと思ったんですか?

何かきっかけがあったら教えてください。

KINU

OL時代に働いていた会社で恒例行事があったんです。退職する方に「その人のイメージでお花を作る」というもので。私はその慣習が大好きで、自分が退職する時を楽しみにしていました(笑)

私が退職するときは、一番色々厳しく教えてきた後輩が私のイメージでお花を作ってくれました。

その子の私に対するイメージは、「超アクティブで我が道を突き進むけど、なんでか超愛されるお姫様」。 私の思い付きで沢山その子を振り回してきましたし、仕事とか人に対する姿勢に関して納得がいかず、長文の暑苦しい手紙を渡したりもしたので、ちょっとイメージに毒が入ってる感じがしましたけど(笑)。

 

お花を渡されるときに、「こんなに心からぶつかってくれた先輩は初めてでした。」って言ってもらえて。嬉しかったですね。 その特別なメッセージが入った、私だけの特別なお花は、今までもらった花束で一番記憶に残っています。

それから数年後に花屋になるわけですが、一番どんな花を作りたいかなと考えたら、私がもらったような「人の想いを伝える花束」を作りたいと思いました。

あとは試行錯誤のなかでそれを突き詰めていくうちに、今の「人となりを表す花」をつくるスタイルにいきついた感じですね。

 Q2 

実際、KINUさんが作るのはとても特別感のある花束ですが、

普通に売っている花束と、なにか作り方に違いがあったりするのでしょうか?

KINU

通常の花屋だと、予算に合わせてその場にある花をキレイにあしらうんですけど、私の場合は、まずご依頼者の、お花を贈りたい方に対する想いやエピソードなどを話していただいています。できるだけたくさんの情報をもらいたいので、その方の性格や人となり、エピソードや写真などもいただいたりします。

その集めた情報から、その方がどんな人なのか、ご依頼者との関係性やメッセージからイメージしていき、どんな色を持った人なのか、どんな花のイメージなのか、ノートに書きながら決めていきます。

 

なので、通常の花屋のようにストックからお花を選ぶのではなく、その人のイメージにあった花を買うために毎回市場に行って買い付けるスタイルにしました。普通の花屋には売ってないようなめずらしい花もよく使います。 花を活けるときは、ずっとその人の事を考えながら作ります。そうすると、毎回活け方も変わってくるんです。ここを飛び出させてみようとか、丸くした方がいいなとか、イメージによって完成の形が全然変わってきます。

例えば、バイオリン演奏者の方に、音階をイメージしたお花を贈ったことがあるんですが、その方がお花を受け取ったときに言ってくださったのは「ドビュッシーのソナタだと思った!私のイメージにぴったり!」って。

私が想像したことよりさらにお客様によって高度に変換されていて感動しました・・・!

そういう想像もつかないことが起こるのがまた楽しいなって思います。

 Q3 

そうなると、毎回、ひとつひとつにかなり制作時間がかかると思うのですが、正直なところ大変じゃないですか?

KINU

そうですね。単に時間的なこともありますけど、それより「人の想い」を受けとめるってかなり精神力が必要ですし、そういう意味で作り終えた後はかなり精神的にも体力的にもズドンときます(笑)。

もちろん、普通の花屋と同じようにキレイな花束を短時間で作ることもできます。でもそれだと私じゃなくてもいいかなって。

感謝とか寂しいとか嬉しいとか、どんな気持ちでも花に乗せて表現すると、ただメッセージを伝えるよりも、ただ花を贈るよりも、10倍にも100倍にも想いが伝わって、みなさん感動してくれます。

以前、すごく厳格なお母さまにプレゼントされた方が、「あんなにふにゃふにゃした笑顔になった母を初めてみました」って言ってくれたことも。

ご依頼者が想いを私に話してくれることによって、お花を贈る方へのご依頼者自身の気持ちがあふれ出して強くなってくるんですよね。

想いを言葉にし、できたお花を見てその気持ちが昇華される。一種のカウンセリングですね!と言われたことも。

ご依頼者にとっても贈られる側にとっても、人生で一番の花束になってくれたらいいなって思いながらいつも作っています。

 Q4

KINUさんがそこまで「花」や「人」に向き合えるのには、なにか理由があるのでしょうか?

KINU

人って、終わりがあるから今を全力生きようって思うじゃないですか。相手とずっと一緒にいれるわけじゃないから今の一瞬を大事にするし感謝する。

花も一緒だと思っていて、枯れていくまでの一瞬を全力で愛でられるもの。

 

そして、いつも改めて思うんですけど、花があるだけでその場の雰囲気がガラっと変わって華やかさが全然違くなりますよね。

花って実用性がなくて、役割が何かといったら「気分をあげる」ため。それだけ。

でもそれってすごくないですか?

だからそれに価値を感じられる人もすごいなって思いますし、その想いに全力で向き合っていきたいと思うんです。

例えば、ご依頼者の想いを受けて、泣きながら花束を作ることもあります。

そんなに感情が動きながら作っているので、それがお客様に伝わった時は、魂を削りながらでもこういう花束の作り方をして良かったなって、やっぱり思いますね。

 

私が作っているものって「強い人の想い」が乗っているから、単なる「花」じゃないんです。

…ほかの言い方はちょっとわからないですけど。笑

だからこそ、人生で一番記憶に残るプレゼントになるんだと思います。

編集後記

今回のインタビューを通じて、まず一番に感じたことがある。

KINUさんの作る花束は単なる「花」ではないということ。

KINUさん自身もまだ表現できてないこの概念に、私が勝手に名付けるのはおこがましいのでそれは未来に譲りたい。

少なくともKINUさんが制作している花束は、「作品」と呼べるものだということだ。

その作品の根底には圧倒的な情熱と、贈る人に対する想いがある。

だからこそひとつひとつの作品にこだわり抜くし、妥協はしない。

そして、「魂を削りながら」作る作品だからこそ、それは私たちの心を惹きつけて離さないのだ。

KINUさんが、あなたの大事な人をどう表現するのか、

次はぜひ、あなた自身で体験してみてほしい。

Interviewed by Tomoe Muramatsu

Written&Edited by Takeshi Ando